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2026/02/24
営業は「チームでやる」時代。分業の「すごい」裏側
複雑なマルチタスクに追われ、肝心の顧客とのやりとりに時間をかけられない。仕事の量が多く、質を上げきれない……。

これは住宅・不動産業界の「営業」に共通する課題だが、どの業界に属する営業パーソンにも覚えがあるはずだ。そして、「営業はキツい」「忙しい」「大変」というイメージを持たれてしまう。

しかし、この課題が解決されつつあるのをご存知だろうか。分業による仕組み化を支援する「あるサービス」が、先進的な企業の間で浸透しつつあるのだ。

では、どのように「分業」は行われているのか。分業により、「営業の腕が落ちる」どころか「成果が上がる」仕組みとは。

本質的な生産性向上のために分業化に取り組む三井不動産リアルティ・黒川伸吾氏と、業界の分業化を支援するhomieの代表・村上靖知氏に変革の舞台裏を聞いた。
営業の「本質」とは
大半の営業パーソンは、顧客とのやり取りや接客のほかに、多くのデスクワークを抱えている。住宅・不動産業においても同様だが、近年、三井不動産リアルティ株式会社は、「仲介営業のあり方」を大きく転換させようとしている。

「現代の営業の本質は、お客様との親密な関係性の構築と高いコンサルティング能力の発揮。

これらを磨き込むためにも、従来どおりの『一気通貫』の営業から切り分けられるものは切り分け、営業と支援チームが協力して進めていく新体制へ切り替えています」

こう話すのは、三井不動産リアルティ株式会社 リテール事業本部長の黒川伸吾氏だ。

三井不動産リアルティは、「三井のリハウス」「三井のリアルプラン」などを擁し、不動産仲介事業の売買仲介取扱件数において、39年連続で全国No.1(新聞報道などによる)を獲得する。
しかし、「No.1はあくまで結果」と黒川氏。

「お客様のためになる提案をし、『ありがとう』をたくさんいただくことが、私たちの本当に目指すところ。No.1は『一番たくさんのありがとうを集めた』結果だと捉えています」(黒川氏)

そんな志の高い不動産業界のトップランナーが着手した営業改革の中身はこうだ。

顧客の意思決定を促す業務」や「物件の商品化」などを営業の「コア」と位置づけ、これまでどおりに営業社員が担当する。

一方で、それ以外の業務(問い合わせ対応、物件のサイト登録、重要事項説明書・契約書の作成、契約から引き渡しまでの対応など)は社内の支援要員や社外のサービスを活用する。

そのための一つの手段として、物件を求める顧客からの問い合わせ、いわゆる「買い反響対応」業務を分業するため、homie株式会社が提供する「HOTLEAD」の利用を2021年3月から5店舗で開始したのだ。
「Webから問い合わせが入ると、すぐに専門スタッフが顧客に連絡をとります」と説明するのは、homieの代表・村上靖知氏。その間、平均42.4秒(2024年度実績)というから驚きだ。

homieの専門スタッフが顧客に連絡をとり、検討の初期段階であれば、希望条件の整理や潜在的なニーズの把握、属性のプロファイリングなどを行う。より前向きな問い合わせであれば、来店相談や物件・モデルハウス見学の希望スケジュールを確認した状態で、会話内容から背景情報までを営業担当者へ渡す。

営業担当者にとって「助かる」サービスなのはもちろんのこと、顧客としても物件に対する熱が高いうちに反応が返ってくるのはありがたい。
「homieにスピーディーかつ丁寧に対応いただけることで、案内取得率(アポイント)や買い成約率も向上しました。顧客からも『対応が迅速になった』など、満足度向上の兆しが見られます。

分業によって、営業社員が本質的な業務に集中できる時間が確保でき、各業務の専門性が高まりつつある証でしょう」(黒川氏)
当初、HOTLEADの試験運用を行なった店舗では、社員の8割以上が肯定的な意見を持ち、「業務負担の軽減や顧客対応への注力が可能になった」と評価したという。

分業に対して「営業の腕が落ちるのでは」という懸念を抱いた人もいるはずだ。しかし、結果はその逆。もちろんそれには理由がある。
「出ない電話」で営業力は磨かれない
「反響対応は営業にとって重要な仕事ですが、それは反響対応が商談につながり、商談現場の経験で営業力が磨かれるからです。

ですが、つながらない電話を5回、10回とかけ、返ってこないメールを10回、20回と送る時間と労力は、営業力強化には結びつきません」と、村上氏。

言われてみれば、たしかにそうだ。

HOTLEADが営業力強化に直結する「商談」の創出を担うことで、営業パーソンはつながらない電話をかけていた時間を使い、万全の準備で「商談」に臨むことができる。HOTLEADは反響対応に特化しているからこそ、そもそもの商談のチャンスも増やせる。

この好循環が回ることで、HOTLEAD導入企業では成約率アップなどの目に見える成果が出るのだ。
定量・定性の結果を受けて、2025年4月からは「HOTLEAD」が260を超える「三井のリハウス」「三井のリアルプラン」全店舗に導入されている。ただ、「導入拡大は慎重に行った」(黒川氏)。

4年という時間をかけて、10店舗、20店舗、次は50店舗……と刻みながらの拡大だった。

「試験導入で良い結果が出ていても、本部から店舗に対して『使え』とは言わず、『使ってみたい』と手を挙げた店舗に徐々に導入していきました。営業を支援するためのものなので、営業部隊や支店長に拒否感があれば、導入しても良い結果にはつながりません」(黒川氏)

実は、三井不動産リアルティは、2000年頃から営業の「分業」に取り組んできた。しかし、その「分業」は10年ほどでいったん白紙になったという過去がある。

「不動産営業には、必要な法律知識や手続きの知識が多くあります。しかし、分業を進めた結果、『もう自分の仕事ではないから』と、知識のない営業職が増えてしまったんです」(黒川氏)
そこで再び、一気通貫型の営業スタイルに戻したものの、もともとの課題は残ったままだ。知識や現場の経験、さらには顧客それぞれに応じた対応など、不動産営業には多くのものが求められる。業務範囲が広ければ効率化や専門性の向上にも限界がある。各自の特性を生かせているとも言い難い。

さらに、近年の顧客ニーズの多様化や情報収集手段の変化により、従来の営業スタイルでは十分な価値提供が難しくなってきた。

やはり、業務の専門分化による効率化とサービス品質向上を目指すべきなのでは。
そこでHOTLEADの導入につながるわけだが、前述した「分業化による営業力低下」への懸念は、もちろん社内のあちこちから上がっていた。

「以前の施策が不調に終わった原因のひとつは、『分業』という言葉から、必要以上に『自分の担当はここまで』と割り切って考える社員が多かったこと。

ですから今回は、一人ひとりがバラバラに仕事をするのではなく、『指揮官としての責任は、あくまで営業にある』『そのうえで、役割ごとに個々が強く成長しながら、ワンチームで仕事をしていくんだ』という強いメッセージを出しています」

加えて、入社3年目までは従来通り一通りの業務経験を積ませる、サポート部署へのジョブローテーションを行うなど、現場と顧客からの声を反映しながら、改善を続けている。
そのときアメリカでは
このように営業組織を支える「HOTLEAD」を提供するhomieは、「住宅・不動産営業DX」をビジョンに掲げ、2019年に創業したスタートアップだ。20年にHOTLEADをリリースして、約6年。

現在、三井不動産リアルティを筆頭に全国約1600の店舗に導入され、不動産売買、不動産賃貸、注文住宅、不動産売却の4領域で、70万件の対応を行ってきた。

代表である村上氏も、創業に至るまで一貫して住宅・不動産業界に携わってきた営業パーソンの一人。

「新卒でたまたま住宅・不動産部門に配属されたのがきっかけで、この業界の面白さを知りました。住まいは暮らしと密接していて、お客様の人生に関わる仕事です。

だからこそマーケットも大きくて、多くの人が『家探しに貢献したい』という思いで従事している。一方で、デジタル化が遅れていることが切実な課題だと感じていました」(村上氏)
創業に踏み切ったひとつのきっかけが、アメリカの業界を見ていたことだ。

ネットの普及により、以前よりも遥かに多くの問い合わせが寄せられるようになった。アメリカでは、その問い合わせをスクリーニングし、熱のある問い合わせを営業につなぐ、というビジネスモデルが誕生していた。

文化の違いがあるから、そのまま日本に持ってくるのは違う。しかし、「営業が本来の仕事に集中できる環境を作る」という点では、日本においても確実に需要があるのではないか。

村上氏の頭によぎったのは、問い合わせに対応する営業の姿だ。

会議中にも問い合わせに気づけば席を外す。逆に、会議やほかの顧客への対応で反応が遅れることも当然ある。休日であっても、必要とあらば返信する。

「専門性の高いオペレーターとテクノロジーを駆使して、反響の一次対応窓口という役割を担えるサービスを構築することができれば、住宅・不動産営業DXの大きな一歩になると考えました」(村上氏)
HOTLEADは「テレアポ代行」ではない
そんなビジョンを反映するように、homieではオペレーターを「コンシェルジュ」と呼称している。

「単純に電話を返すのではなく、言葉の通り『案内人』だからです。

問い合わせへの対応を行うという業務内容から、『気合と根性で、めちゃくちゃ電話をかけまくっている』と誤解されることもあるんですが、実際にはシステムの上で、むしろリラックスしながら働いていますよ(笑)」(村上氏)

村上氏の言うとおり、コンシェルジュの役割は、アポを取ることではない。じっくりと話を聞きながら、ニーズを正確に把握したり、考えを整理する手伝いをしたりすることで、営業担当にいいかたちでバトンを渡すのが使命だ。

事前に得た情報の質と量によって、営業担当者の労力は削減され、顧客の満足度も向上するはずだ。村上代表の読みは当たっていた。
日本では『営業は一気通貫』が基本でしたし、管理職の方たちは一定の成果を挙げられた優秀な営業パーソンが多い。そんななかで、お客様の初期対応という重要な部分を外部に任せるのは、抵抗感もあったでしょう。

三井不動産リアルティ社をはじめ、できたばかりのサービスを使っていただけたのは本当にありがたいですし、任せていただいた上で、しっかりと数字で成果を示せていることが嬉しいですね」(村上氏)

相手との通話という手段こそアナログだが、コンシェルジュたちの活躍の裏側にはシステムの力も働いている。

たとえば、反響が入ると、コンシェルジュのモニターに即座に関連情報が表示され、ボタンひとつで電話をかけることも、メールを送ることもできる。架電に反応がなければ、システム上で「次はこの時間に電話をかける」と自動でセットされる。
HOTLEADのシステム画面は残念ながら企業秘密のため、画像はあくまでイメージだが、次から次へと表示される反響、刻一刻と移り変わる画面は圧巻。
必須の伝達事項は伝え漏れのないよう、最初からリストアップされている。会話内容はすべてシステムに残され、「何回電話をかけた」「こういう話をした」と要約して営業に伝えられる。

逆に、電話に出ないことが続き、事前に設定された回数を超えれば、営業担当に「電話でのコンタクトは難しいお客様です」と自動で連絡が届く。

営業担当とシステムを共有しているため、顧客から直接連絡があったり、店舗に来店したりすれば、コールリストから消去され、自動的にコンシェルジュの手を離れる。

住宅・不動産営業を支えるHOTLEAD自体の質は、業界経験豊富な「人(コンシェルジュ)」と、テクノロジーによって最適化された「オペレーション」が支えているのだ。
「それなら働ける」。離職率低下のワケ
反響対応を営業の仕事から切り分けたことで、好影響が出ているのは既に示したとおりだが、影響は成約率や顧客満足度上昇だけにとどまらない。ひとつは、離職率の低下だ。

休日中も夜間もHOTLEADが反響対応を行っていれば、次に営業社員が出社したときには、すでに商談化されている。だから対応を急かされることなく、休むべきときはしっかり休める。

また、仲介営業の多くは火・水曜日を定休日に設定している。三井不動産リアルティでも、特に子どもがいる営業社員は、職場と家庭の両立が難しく、離脱を決断する人が少なくなかったという。

「労働時間が長かったり、すぐに反応を求められたり、という状況は確実に改善されました。それから、社員を営業担当と支援担当に分け、支援部隊は水・日曜日や土・日曜日休みにしたことで、『それなら働ける』という人もいます。

結局、働きやすい職場が第一。最近は『明るく楽しい職場にしよう』と、根本に立ち返ったような気がしますね」(黒川氏)
すでに営業の現場ではさまざまな営業支援ツールが利用されている。そのおかげでよくなった部分は多くあるだろう。しかし、どんなにいいツールでも、導入したらまずは使い方を覚えなければならない。そのせいで逆に忙しくなることもあるし、結局、定着に至らないこともある。

「HOTLEADはMA(マーケティングオートメーション)ツールですが、私たちはツールと、コンシェルジュをセットで提供するため、営業パーソンの時間を奪うことがありません」と、村上氏。

営業に思いが強い組織ほど導入のハードルは高いというものの、すんなり定着するのは、それゆえだ。
もちろん、ひとつのサービスですべての課題が解決するような「魔法」は起こり得ない。しかし、確実に、着実に、住宅・不動産業界の変革は進んでいる。
本記事はNewsPicks Brand Designが制作したコンテンツです。
執筆:唐仁原俊博
撮影:小島マサヒロ
デザイン:立花和政
編集:大高志帆

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